『 私は長年、樹皮や蔓などを組織して、かごに似た小立体を作ってきた。かごのかたちや機能には、パズルのようにいろいろな観念が組み込まれていて魅力的だ。再発見した面白さを私の暗号に置き換えて、再びかたちに仕立てていく。多種の植物を出来るだけ自分で集めて、性質を観察し独創的な構造を見つけるという実験的な方法をとっている。この二つでは、立体の縁に対して水平垂直を成す組織(織り構造)では窪みが45度の傾斜で入り、斜めの組織(組み構造)では窪みが90度に入ることを対象させている。いつでも形には私が関心を持ったことが含まれているのだが、構造の対比のテーマには長年取り組んでいる。 』
未だ平穏だった2019年の末、文化人類学の写真展で、アラビアの女性が、マットを作る材料として、ナツメヤシの葉を二本飛び網代の帯に組む様を見た。出来た帯は巻き取られて直径1mにもなっていた。後から帯を同心円状に展開し、その縁を細紐で綴り合わせると網代がピッタリかみあって、要素が一体になる。 地中海沿岸や中近東で見られる技法の知恵に感激を新たにし、コロナ禍で雑念に悩まされる中、私は、これをヒントに、いつもと違う順序で形を考える実験をした。作品のタイトルは「材料の準備段階と成形段階を分離して行った」ことを現している。